2月 20, 2013 -
本
No Comments


塩狩峠/三浦綾子
「一粒の麦、
地に落ちて死なずば、
唯一つにて在らん、
もし死なば、
多くの実を結ぶべし。」
冒頭の聖書の言葉はこの物語の要約である。しかも実話を基にしていると言うから驚く。
殆どの人が自己実現を究極の目標だと思っている現代の社会で、この聖書の言葉は、その上にもう一つの目標がある、と教えている。
マズローが晩年に自己実現の上に更に高度な段階を設けたのも頷ける。
それはそうだ。自己実現なんて、向こう側まで持ってはいけない。自分が死んでしまえば無になってしまう。
私は、人類がこの数千年の間、滅亡せずに生きながらえたのは、この、自分を犠牲にして周りを助ける、あるいは弱いものを助けるという、キリスト教的な精神に、多くの人々が共感してきたからだと信じている。
ともあれ、本書から受けた衝撃は大きい。本棚の奥から聖書を引っ張り出してきた。